PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の不妊治療・体外受精について受精着床学会で発表しました

2026年7月31日(金)、第44回日本受精着床学会総会・学術講演会において、院長・瀬川智也がPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の不妊治療・体外受精(ART)について発表しました。
今回の発表では、レトロゾール(アロマターゼ阻害薬)を用いた治療や、小さな卵胞からも採卵を行う当院のPCOS治療について、これまでの治療成績を報告しました。
PCOSでも、適切な治療を重ねることで良好な治療成績が示されました
累積生産率
累積生産率
2016年〜2025年に当院でARTを行ったPCOS患者203人のデータ
「PCOSだから、妊娠・出産が難しい」
とは限りません。
PCOSでは排卵しにくいことがありますが、卵巣の状態に合わせて適切に治療を行うことで、妊娠・出産を目指すことができます。
学会発表について
今回の発表テーマは、
「開業医のPCOS治療 ~アロマターゼ阻害薬による一般不妊治療およびART~」です。
PCOSの診断から一般不妊治療、体外受精などのARTまで、当院で行っている治療とその成績について報告しました。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは
PCOSは、排卵しにくい状態を引き起こすことがある病気です。
卵巣に多くの小さな卵胞がみられることがあり、月経不順や排卵障害によって妊娠しにくくなることがあります。ただし、PCOSの状態は患者さんによって異なります。
そのため不妊治療では、ホルモン値や卵巣の状態を確認しながら、排卵誘発や体外受精などの治療方法を一人ひとりに合わせて選ぶことが大切です。
PCOS患者さんの体外受精(ART)における累積生産率
では、実際に治療を重ねた場合、どのくらい出産につながっているのでしょうか。
2016年~2025年に当院でARTを行ったPCOS患者203人について、採卵や胚移植を重ねた場合に、最終的に出産に至った割合(累積生産率)を解析しました。(Kaplan-Meier法による)
PCOS患者203人の累積生産率
(Kaplan-Meier法)
特に、1回目から2回目にかけて累積生産率が大きく上昇し、その後も緩やかに上昇しています。
採卵3回まででは92.6%、胚移植3回まででは87.3%となり、PCOS患者さんでも治療を重ねることで妊娠・出産につながる可能性が示されました。
※累積生産率はKaplan-Meier法により算出しています。
※2016年~2025年に当院でARTを行ったPCOS患者204人のうち、胚盤胞を他院へ搬出した1人を除く203人を対象としています。
当院のPCOS不妊治療・体外受精
PCOSでは、卵巣を刺激しすぎると多くの卵胞が一度に育ち、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)などのリスクが高くなることがあります。
一方で、刺激が弱すぎると排卵しないこともあります。
当院では、レトロゾールなどを使用しながら、卵巣の反応を確認して刺激方法を調整しています。
今回解析した304採卵周期では、中等症以上のOHSSは0%でした。
小さな卵胞から得られた卵子も妊娠につながっています
PCOSでは、卵巣に小さな卵胞が多くみられることがあります。
一般的には大きく育った卵胞から採卵しますが、当院では状態に応じて10mm未満の小さな卵胞からも採卵を行っています。
今回の発表では、小さな卵胞から得られた成熟卵子から作られた胚を移植した場合でも、
臨床的妊娠率 61.6%
継続妊娠率 51.2%
という結果でした。
小さな卵胞から得られた卵子も、妊娠につながる可能性があります。
PCOS患者さんの胚移植の治療成績
2016年~2025年に当院でARTを行ったPCOS患者204人(326移植周期)について、移植方法別の治療成績も検討しました。
HR周期(ホルモン補充周期)
ホルモン剤で子宮内膜を整えて胚移植を行う方法です。
LTZ-排卵周期(レトロゾール排卵周期)
レトロゾールを使用して卵胞の発育・排卵を促し、排卵に合わせて胚移植を行う方法です。
産科合併症のより少ない安全な移植法です。
| 移植方法 | 移植周期数 | Grade良好胚率 | 臨床的妊娠率 | 生産率 |
|---|---|---|---|---|
| HR周期 | 131 | 67.2% | 67.2% | 57.3% |
| LTZ-排卵周期 | 132 | 68.9% | 65.2% | 56.8% |
| 自然排卵周期 | 49 | 51.0%ᵃ | 53.1% | 42.9% |
| 新鮮胚周期 | 14 | 100.0%ᵇ | 64.3% | 50.0% |
※Grade良好胚率:day5胚、またはAA・AB・BA胚。
※異符号間に有意差あり(P<0.01)
HR周期・LTZ-排卵周期では、生産率はいずれも約57%でした。
今回の学会発表でお伝えしたこと
今回の学会発表では、当院で行っているPCOS治療と、その治療成績について報告しました。
2016年~2025年のPCOS患者203人の解析では、採卵3回までの累積生産率は92.6%、胚移植3回まででは87.3%で、304採卵周期における中等症以上のOHSSは0%でした。
学会発表の結論
レトロゾールはPCOS患者さんの一般不妊治療・ARTにおける有用な選択肢であり、小卵胞採卵を行うことで、低卵巣刺激でも安全かつ十分な治療成績が期待できると報告しました。
当院では、年齢やホルモン値、卵巣の状態、これまでの治療歴などを確認しながら、一人ひとりに合わせた治療を行っています。
